ドッペルゲンガー
高岡先生が稲岡先生を連れて保健室を出て行く。


「西村君も教室に戻っていいんじゃない?
アノ子も消えてしまったようだし。」


「まぁ、そうですね。いつまでも引き込もってらんないし。」


そう言うと、海斗は荷物を取り教室へと向かった。
三上先生は海斗を見送ると保健室のドアを閉め、机へと向かった。
そして、海斗が置き忘れていた茶封筒を取り上げると、ニヤリと笑った。


教室に入るとクラスの生徒が海斗を好奇の目で見ている。
それもそのはず、さっき稲岡先生を投げた犯人がノコノコと戻ってきたのだから、誰もが不思議に思うだろう。
そして次に生徒の目は、高岡先生へと向けられる。
ノコノコと現れた犯人をどう裁くのかを期待しているのだ。


「西村君、とりあえずこっちへ来なさい。」


高岡先生は海斗を廊下へ呼び出した。


「何なんですか?オレ、すんごい見られてましたけど。」


「そりゃそうよ!あなたは稲岡先生を投げて、しかも逃げたことになってるんだから。
このままじゃあなたは停学だわ。」


「停学?ちょっと冗談ですよね?だってオレは何もしてないんですよ!」


海斗はまさかの展開に驚くばかりだ。


「幸い稲岡先生はうまくごまかせたけど、クラスのみんなは現場を見ちゃってるからねぇ。」


すると、教室のドアが開き学級委員長が一人廊下に出てきた。


「さっきの件なんですが、私がなんとかみんなを説得しますので、お任せください。」


「あら、それは助かるわ。西村君、よかったわね。ちゃんとお礼をいっときなさいよ。
さてと、私は急用思い出したから学級委員長あとはよろしくね。」


高岡先生は学級委員長の突然の申し出に驚きながらも了承し、その場を去っていった。


「おい、海斗。どうだ私の名演技は?」
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