ドッペルゲンガー
第八章 善と悪
保健室にたどり着くと海斗はドアに手をかけた。
しかし、その手をおじさんが制する。


「待て、この中には入らないほうがいい。ただならぬ邪気を感じる。」


「なんか嘘臭いな。」


「私が言うことは絶対だ!故に私は入らんぞ!」


「中に息子がいても?」


「よし、行こう!」


おじさんは自らドアを開けて保健室へと乗り込んだ。海斗もそれに続く。
中に入り、周りを見渡すと部屋の隅に三上先生がうずくまっていた。
そしてこちらに気付くと、ゆっくりと立ち上がった。


「あら、二人ともどうしたの?」


「三上先生こそ、そんなとこに座ってどうかしたんですか?」


「ちょっと色々ありすぎて疲れたみたいだわ。」


三上先生は微かに笑みを浮かべている。


「おい、明らかに様子がおかしいぞ。それに手を見てみろ。」


おじさんが後ろから囁く。三上先生の手を見てみると、封筒が握られていた。


「あら、バレちゃったみたいね。これが欲しいの?」


三上先生は握っていた封筒を海斗の方へ掲げて見せる。


「おい、貴様!早く正体を現せ!」


おじさんが突然叫ぶ。しかし、見た目が学級委員長なのでいまいち覇気がない。


「やはりあなたですか。久しぶりですね。」


確かに三上先生が話しているのだが、声が全く違う。


「三上先生、声おかしいですよ。」


「お前が海斗か。かわいそうな少年だ。
こいつのせいでこの世から消えかけたんだからな。」


その言葉に海斗は驚いた。おじさんのせいで自分が消されかけたというのだ。
おじさんの方を見ると、下を向いて黙っている。
さっきの威勢の良さはすっかりなくなっていた。
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