ドッペルゲンガー
待機場所は学校から徒歩10分の海斗の家となった。


「あら、トミ、清水君じゃない。久しぶりね。」


「おばさん、もうトミーでいいですよ。」


トミーが申し訳なさそうに言う。


「人の親におばさんはないだろ。」


海斗が口をつっこむ。


「じゃあ、お姉さんか?」


「オレに姉貴はいねぇ。」


「じゃあなんだよ?」


「コラ、海斗!どうでもいいでしょ!おばさんでもお姉さんでも、お姉さんでいいわよトミー。」


「あ‥はい。」


トミーは苦笑いで答えた。。そして、つくづく親子だなぁと思うトミーであった。


「よし、出陣だ!であえ、であえ〜!」


「そんな武将いねぇよ。」


後ろでは母が呆れていた。



そして、学校に着いたのが午後9時ちょうどだった。


「おい、相棒!いくらなんでも早すぎだろ?」


「オレは、一時間前行動を怠らない。」


「朝っぱらから寝坊したやつがよく言えるな。」


トミーの言葉に反論できないのか、海斗は黙ってしまった。
そして、突然走り出した。


「おい、待てよ!」


トミーも慌てて後を追う。どうやら体育館の方角へ向かっているらしい。


そして、体育館の前で止まった。


「トミー、ここからはオレ一人だ。もしもの時は‥これを使え。」


海斗は呼子笛をトミーに差し出した。
しかし、トミーはその手を押し返した。


「普通逆だろうが。ギャグのつもりか?」


「お前がだろ。」


「これは一本取られた。気を付けてな。」


「何かあった時は真由美を頼む。」


「あえてオレは何も言わんぞ。」


すると、海斗はトミーにウィンクして体育館の裏に消えた。
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