ドッペルゲンガー
海斗はもう一発殴ってやりたかったが、それを遮るかのように教室のドアが開き担任の高岡先生が入ってきた。


「みなさん、席についてください。」


高岡先生はみんなが席についたのを確かめると、なにやら険しい表情で静かに話しはじめた。


「残念なお知らせがあります。昨日の夜、西村君が補導されました。
西村君は今も警察署で‥」

高岡先生は持っていた出席簿を落とした。
海斗が教室にいることに気付いたのだ。


「ちょっと!西村君!なぜここにいるの!?」


高岡先生は海斗のほうにつかつかと歩み寄ってきた。そして海斗の手をとると、引っ張りあげ席を立たせた。


「ちょっと来なさい!みなさんは静かに自習しとくように!いいわね!」


海斗はそのまま教室から連れ出され、職員室の奥の小部屋へと連れていかれた。そこは生徒の間では説教部屋と名付けられていて、もちろん海斗は何度も来たことがある。


「すぐ戻りますから、ここでおとなしく待ってなさい!。」


そう言うと高岡先生は海斗を残し、ドアを閉め外側から鍵をかけた。
普段は優しい高岡先生だが今日はややヒステリー気味のようだ。


「高岡先生が嘘ついてるわけないし、オレが昨日まっすぐ家に帰ったのも嘘じゃないし、う〜ん。」


するとドアが開き、今度は稲岡先生が入ってきた。後ろには高岡先生が待機している。


「お前、ホントに海斗なのか?」


これまた不思議な質問に海斗は驚いた。

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