ドッペルゲンガー
昔からトミーは学校でなにかあると、決まって保健室に逃げ込んでいた。
海斗が保健室のドアを開けると案の定、トミーがいた。


「あら、今は授業中よ。何か具合でも悪いの?」


この声は間違いなく本校のマドンナと囁かれる、保健の三上先生だ。
しかし、生徒達の間では美神先生で通っている。
トミーの逃げる回数は高校に入って右肩上がりだ。
それもそのはずである。
トミーに目を移すとかなりしょぼくれた表情だ。
どうやら誤解は解けたらしい。


「カイ、さっきはごめんな。オレ、何も知らずに。煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」


「えっ?お前は煮ても焼いてもうまくないだろ。何言ってんだ?」


「まったくバカがなおんねぇな!三上先生、こいつココの具合が悪いんですよ。どうにかなんないすかね?」


トミーは自分の頭を指差しながら言った。


「西村君の噂は聞いてるわよ。もちろん悪いほうのね。でも不思議よねぇ、西村君そっくりの犯人。
ねぇ、ドッペルゲンガーって知ってる?」


三上先生の問いかけに、二人は顔を見合わせた。


「ドッペルゲンガー?なんですかそれ?」


すぐに海斗が疑問をぶつける。


「普通1つの世界には自分は1人しかいない。
でも1つの世界に2人目の自分が入ってきてしまう。その二人目の自分のことをドッペルゲンガーと呼ぶのよ。」


トミーは口を半開きにしてポカーンとしている。


「じゃあもし、その二人目の自分と出会ってしまったらどうなっちゃうんですか?」


海斗は一番の疑問をぶつけた。


「もしも二人が出会ってしまうと‥。」


海斗は生唾をゴクリと飲んだ。


「どちらか一方が消えてしまうのよ。」
< 9 / 38 >

この作品をシェア

pagetop