背中
それに気付いた時、蘇るのはあの日の子守唄
優しかった背中越しに聞こえてきた歌声
手を繋いで、夕焼けに映る二つの影法師
それは時間と共に一つに重なっていた
時は流れ今…
ハタチをとおに越えた今もうまく伝えられないまま…
こうして歌にしかできないけれど、母と歩んだこの道を俺は今、誇りに思う
俺は再び意識を庭先で水を蒔くその背中に向けた
そして、そっと語り掛ける
「母さん。
俺、あんたの元に生まれてこれて良かった。」
『ありがとう』
その背中は少し振り返ると小さく微笑んでいた
-END-