【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
 …卒業式に校長の挨拶なんていらないって言う人も多いけど、どちらかというと小さめのこの中学校にもう5年ほど勤めている校長は生徒ともとても仲がよくて…私も時々話していた。

 だからこそ聞き入ってしまう。


 噂によると、この春に離任するそうで。

 寂しくて仕方ないけど、仕事だから仕方がない。


 入場のときに体育館に響く、ヴィヴァルディの「春」。

 1年のときに音楽の授業で初めての鑑賞をした、ちょっと思い出深い曲でもある。


 ――――すでに、泣きそう。


 真ん中に一本大きく作られた通路を通って、自分の席に着く。

 教室に戻ったときに3年が座れるように、1,2年の椅子を使っている。


 教頭の挨拶で、式が始まる。


 好調、PTA会長の話が終わり、もう証書授与。


 …みんなで言ってたんだ。

 絶対先生を泣かせようって。

 いたずらなんかじゃなく、感動させようって……。

< 10 / 37 >

この作品をシェア

pagetop