【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
「次、佐久間」


 勝人が立ち上がる。

 いつもみんなを引っ張っていた勝人…。

 揃って見上げる、クラス全体。


「…ちょっと長くなっていいっすかね」

「時間は考えろよ」


 そういいつつもふっと笑った先生に、勝人は話し始める。


「―――っと…。まず、長い人は3年間、短くても1年間…ありがとう。
今年は体育祭も合唱コンも優勝できて嬉しかったし、普通に毎日楽しかったし。
どうなるかと思ったようなこともたくさんあったけど、本当感謝してるんで。

高校行ってもみんなのこと忘れないんで、俺のことも記憶の片隅程度にはおいておいてもらえれば嬉しいっす」

「意外と短く済んだな」


 先生の感想につい同感…。

 絶対もっと長くなると思ってたから。


「先生もなかなか失礼ですよね」

「お前もよく言うようになったよな」


 まったく、勝人と先生の会話はいつ聞いても飽きない。

 日常茶飯事だったこの会話も、もう聞けないんだ……。


「次――」


 …こうやって、次へ次へと順番が回っていく。


 私は、何を言ったのか覚えていない。

 ただ…忘れないでって、そういってしまった気がする。


 先生に渡した花は、勿忘草。


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