【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
 丁度よく、ドアの開く音がする。

 試験監督の先生だろう。正直、雰囲気が怖い。


 大丈夫、大丈夫…。

 必死に自分に言い聞かせる。

 でも正直、かなり緊張していた。


 先生の説明が始まる。

 ひとつでも聞き逃してへまをすれば、それで落とされる可能性がある。

 一字一句聞き逃さないように、まっすぐ先生を見て話を聞いた。


 説明が終わって、10分休みのあとに国語だと。


 直前の詰め込みのしようもない国語。

 それだけに、これまで頑張ってきた私は…ほんのわずかな自信も、あった。


「ったくよー。なんで国語なんてあるんだよ。選べりゃいいのに」

「…そうだね」


 国語の逆に、数学は大の苦手。

 五教科の中で、数学だけ二桁目が違うなんていつもの事。


「俺数学だけなら自信あるのになー」

「なんで佐久間が数学できるのか、理解不能だけど」

「藤架!お前毎回失礼なんだよ!!」

「本当の事じゃん!」


 …再び先生が教室に入ってきた。

 あわてて口を閉じる二人と、やはりあわてて席に着くほかの人。


 …国語…点取れなかったら終わりだ。


 黙想をかけられたため、自分の席に問題用紙と解答用紙が配られたのを、聴覚のみで確認する。

 緊張が教室全体を包む。


 チャイムとともに先生の合図が聞こえ…一斉に用紙をめくる、受験生。

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