【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
入学式/佐久間家
「…とうとうきちゃったねー、この日…」

「だね」


 …今ここに勝人がいないことに違和感を感じる私たち。

 だけど、おちおち話すのに夢中になってたら乗り過ごしそうで、言葉は途切れ途切れ。


 今日は公立の入学式。

 私立は大体が明日で、父兄が大勢来れるように少し遅らせて土日にするところもあるそうだ。


「…なんだか気味が悪い」

「同意」


 この会話も、先ほどの会話から1分以上立ってから。

 10度ほど一言二言の会話を繰り返した頃には駅についていたから、驚きだ。


「この調子で行けば、15分前には着きそうだね」

「うん」


 藤架の言葉に相槌を打つときも、ほとんど上の空。

 うるさいのが一人いないと調子が狂うし、藤架もいつもより数段静かだから。


「どんな人がいるのかな」


 …そう言って学校のほうを見る藤架の瞳がかすかに潤んでいたことには。

 私は一切触れないでおこう。

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