【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
 電車の中、突然鳴った携帯。

 やばい…マナーモードにするの、すっかり忘れてた。

 しかも勝人だ。


 …ごめんっ。


 ぎゅっと目を閉じ、私は気づいていないフリをする。

 勝人は電話に出なかったら大概メールをくれるから助かる。


 電話が切れて30秒後にはメールが着たから、私はすぐにケータイを開いた。


「あ、メール?」

「うん。ちょっとごめん…」


 電車に乗っても紀野ちゃんは話し続けていたけど、私は全くと言っていいほど聞いていなかった。

 一生懸命話している彼女には申し訳ないけど、完全に聞く気力が失せている。


 to:春
 ――――――――――
 さっき藤架来たけど、春うち来れるか?
 ――――――――――
 by:勝人


 …え?藤架…遊びに行ったんじゃなかったの?

 もしかして、私が紀野ちゃんといたから気を遣って…。


 駄目だ、こんなことを考えただけで泣きそうになる。

 私は、藤架にそばにいて欲しいのに。


 to:勝人
 ――――――――――
 行けるよーっ!
 もうあと3分くらいで駅着くから、直接行くね(´∀`)
 ――――――――――
 by:春


 返信を打ち終えて、気づいた。

 また紀野ちゃん、しゃべってたんだ。

 ごめんなさい。


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