【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
「春も大きくなったね。はじめてみたときは今の半分もなかったのに」

「そんなに小さかったですか?覚えてないですよー」

「そりゃ本人はね。それでもあの時は勝人のほうが小さかったし」


 今は私より20センチ近く背が高い勝人。

 昔のピーピー泣いてた姿なんて想像できない。


 …私、勝人、藤架、勝人のお母さんの4人、思い出話でとても盛り上がる。


 記憶があるのは大体4歳ごろから。

 でも、生まれた病院も一緒で…自分たちが知っているよりずっと前から一緒にいる。

 たくさんケンカしたし、数日口を利かないなんてこともあったけど、今こうして3人でいることができて。


 …でも、慣れって怖いもの。

 今こうしていることで、また明日が辛くなる。



「じゃぁな、またいつでも来いよー」

「じゃぁ遠慮なく!」

「またねーっ!」


 玄関まで見送りに来た勝人に、そろって手を振る私と藤架。


「なんだか久しぶりだったよね」

「うん…懐かしかった」


 また勝人がいなくなったことで、会話が微妙に重くなる。

 でもそれをまったく気にしていないフリをして、私たちは家までのわずかな道を歩く。


 藤架は私のことを気にしてくれたのに、私は何もできることがなくて。


 不器用な私なんかと違って藤架はもっともっと社交的だった。

 それでも、ずっとそばにいてくれたから安心していたんだ。


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