【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
そばにいて欲しいだけ
 次の朝。

 藤架と電車に乗って、数十秒。


「春-!」


 ――紀野ちゃんだ。


 唯一、藤架といられる時間だと思っていた電車。

 まさかここでも会うなんて。


「こっちこっち!席空いてるよ、早く行かなきゃとられちゃう」

「え、あ……っ」


 …でも

 藤架が……。


 紀野ちゃんの勢いに押されて藤架のそばから離れそうになったとき、

 なぜか涙が出た。


 見逃さないでいてくれるんだね。

 やっぱりどこまでも優しい。


「春…っ!」


 藤架が私の手首をつかんだ。


「どうしたの?」


 うつむく私と目を合わせるために、かがんで私の顔を見る。


「春」


 ―――私は。

 ただ、今までずっと一緒にいた勝人や藤架と離れてしまうことが、怖かっただけ。


 いつからか…紀野ちゃんも、振り返って私のほうを見ていた。


「ねぇ…言ってくれなきゃ、エスパーじゃないんだから、分からないよ。話して?」


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