【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
「…ごめん、あたしが無理やり――」

「違うの」


 紀野ちゃんの言葉に私は勢いよく首を振る。


「私…っただ、藤架に忘れられるのが怖かった」


「え――――?」


 不思議そうな表情を浮かべる藤架。

 うつむいて黙り込んでしまった紀野ちゃん。


「小さいときからずっとそばにいてくれたけど…クラスも離れたし藤架は実際すぐ誰とでも仲良くなれちゃうから、私のことなんて忘れちゃうんじゃないかって」


 …大体こんな感じのことを、しゃくりあげながらまくし立てた私。

 息切れしていたので、一気に空気を吸い込んだ。


「…そっか」


 そういって笑った藤架は、そっと私の頭を撫でた。


「忘れるわけないでしょ!」


 …一度収まってきた涙がまた溢れ出しそうで、私は困ってしまう。

 そんな優しい目で見られたら。


「佐久間もさ、本当は結構心配してたよ?あいつ一人でやってけるのかって。だからむしろ、この子が春と一緒にいるの見て、少し安心したんだ…。ごめんね、そういうつもりは全然なかった」


 私のことを…心配?

 本当に?


 全部私の思い込み、勘違いだったんだ。

 本当は忘却なんかじゃなく優しさ、思いやりだった……。


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