【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
勿忘草の想い

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―――――…


「―――あいつら上手くやってんのかねぇ」


 綺麗に整理整頓された机には、紫色の勿忘草。


「お、前の学校の生徒ですか?」

「はい」


 離任式の日に撮られた一枚の写真には、クラス全員の顔がある。

 時間が無い中全員が集まっていた。


「いやー、やっぱり担任を持つと思い入れも違うんでしょうね。僕も頑張りますよ」


 目の前で照れたように笑う新米教師。

 このような笑顔を見るたび、彼は初心に帰るのだった。


 机に咲く紫色が、一層輝く。

 まだ散る気色のない、小さな可愛らしい花たち。


 彼にとってそれは、今までの教え子のようでもあった。


 勿忘草の花言葉、「私を忘れないで」。

 本当に、本気で、このような言葉を口走りそうになったのは

 彼だったりする。


 ―――私の役目は

 きっともうすぐ終わる。


 本当に切れない、強い絆が結ばれたとき。


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