【完】別れの季節、出逢いの季節-勿忘草の想い-
ある日の朝


「おはよ、勝人!」

「おー春。藤架は?」

「たぶんもうすぐ…あ、来た」


「おはよーっ!」


 …幸い勝人も電車の方向は一緒だったから、朝は一緒に行くことができる。

 私たちより課外が10分早いらしい。そんなの嫌だ。


「ったくよー…もう暑くね?まだ夏服来ねえんだけど」

「ご愁傷様ー。脱水症状起こして干からびるんじゃない?」

「冗談にならないから」


 毎日のように下らない会話を繰り返す。


 …もうわずかに初夏の匂いがする…5月となっていた。


「電車来るよ」


 私は向かって右側を指差す。

 電車が向かってくるのにあわせ、反対方向の踏み切りが閉まりだすのが見えた。

 3人そろって、空いている車両を見つけて乗り込む。


「おはよーっ!!!」


 電車の中だというのに人一倍大きな声を出して手を振る“紀野”。

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