ONLOOKER Ⅱ
「准乃介先輩! サトちゃんがいなくなったって言うんすけど」
「え? なにそれ?」
なにと聞かれても、夏生にだってよくわかっていないのだ。
後ろから来た聖と、前を歩く夏生の間で、里吉か消えたということ以外は。
事態を理解できないままでいると、ばたばたと、二人分の足音が聞こえた。
振り返ると、展望台にいると聞いていたはずの直姫と恋宵が、走ってくる。
「夏生先輩! サトちゃんは」
「……いない」
「やっぱり……」
妙に焦った様子の二人に、いよいよ不審なものを感じる。
やはりなにかあるのだ。
どういうこと、という声に、直姫は「これ」と紙切れを差し出した。
無地の白い紙。
覗き込むと、やけに角張った文字が並んでいるようである。
まるで筆跡を消すように書かれた、その意味を理解して、彼らは息を飲んだ。
その時になってようやく、ことの重大さを知ったのだ。
『シズミサトキチ ハ アズカッタ
カエシテ ホシケレバ、ヨウキュウ ヲ ノメ
レンラク ヲ マテ』
脅迫状。
「ウソでしょ……」
背筋が凍る。
誰かの声にならない声が、乾いて張り付いた喉から、静かに転がり出た。
(つづく)
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