ONLOOKER Ⅱ
「え、直姫、『昔から』って?」
「え?」
里吉にその言葉を浴びせられた本人もまた、疑問符を投げた。
里吉と直姫が家族ぐるみで昔馴染であることは、つい先日判明したばかりである。
そして、夏生と里吉もそういった間柄だということも、同じように。
しかし、今の里吉の言葉では、まるで。
「えぇっと……直ちゃんと夏生も、幼馴染み、にょろ?」
「ん?」
「え?」
今度は二人分。
疑問符に疑問符で返す張本人らに、揃って首を傾げてばかりだ。
「……覚えてませんの? お二人とも」
里吉までが呆れたような、信じられないというような複雑な表情で言った。
「え、ちょっと待って、うそ」
「嘘じゃありませんわ、なに言ってるんです」
「え? あれ?」
「まだ小学校にも上がる前のことですけれど、あなたのお父様と夏生さまのお父様を一緒にお招きしたことが、何度もありましたわ」
父親に連れられて志都美家へ来た二人がちょうど同じ年頃だからと、親同士の用事が終わるまで三人で遊んでいたことが、時々あったという。
ちゃんと写真も残ってますわよ、と里吉が言う。
夏生も直姫も、なんとか思い出そうとするが、その努力は失敗に終わった。
「え、全然覚えてない」
「俺は志都美家に行ったこと自体、あんまり」
「まぁ、酷いですわ二人して!」
頬を膨らませて怒った素振りを見せる里吉。
だが次の瞬間、再三の爆弾発言によって、また空気が凍ることになるのである。
「私はあの頃から夏生さまをお慕いしておりましたのに。あなたが直姫さんとばかり遊んでいらっしゃったから、私、女の子になることを決意しましたのよ」
意味もなく「……う、うん」と頷いた聖は、意味もなく夏生に小突かれていた。