ONLOOKER Ⅱ
「申し訳ありません、すぐに淹れ直しますので!」
直姫もやはり真琴が思っていた通り、それなりに演技はできている。
夏生から猫被りの方法を教わったのかと真琴は考えていたが、実は母方の祖母が舞台女優だったらしい。
小さい頃に冗談半分で教え込まれたことが妙なところで役に立っているようで、実際普段も、そのやる気のない姿勢と欠けた愛想を巧く隠すのに活かされている。
「はい、OKです! 一旦休憩しましょうか」
序盤の一幕を通しで練習していたが、裏方にまわった委員長の掛け声で、一度軽い休憩に入ることになった。
あがり症の彼がくじ引きで重要な役割になってしまったらと、誰もが少なからず危惧していたのだが、委員長権限と実行委員へ立候補したことをフルを利用して、いつの間にか自分の名前を箱から抜いていた。
案外ちゃっかりしたところがあるのかもしれない。
すっかり全快して復活した藤井は、まさか自分のクラスが演劇なんて言い出すとは夢にも思っていなかったようで、ただでさえ丸い目をさらに真ん丸にしていた。
他のクラスはやはり、お茶会や舞台鑑賞など、定番の内容らしい。
シンデレラをはじめ、姉役の一人や舞踏会の出席者である淑女役の数人が男子生徒であることには、多少の責任は感じたようだ。
衣装合わせをする彼らに、悪かったな、と小声の謝罪があった。
きらびやかなドレスを手に、少年たちは、ただ苦笑いを浮かべた。