ONLOOKER Ⅱ
最後には結ばれる二人の役だろうがロマンチックなシーンだろうが、すべては“仲の良い少年たちのスキンシップ”で済まされるのだ。
“友達同士”なのだから、恋する乙女にライバルとして妬まれることもあるまい。
それが麗華の主張であったのだが、でも結局は、こだ。
直姫が実は女だということが誰かに気付かれている、ということもないだろう。
自分で言うのもなんではあるが、これで意外に上手くやっているのだ。
(大友さんが言ってた……女の子は恋のためならアホになりますの? だっけ)
「直姫? おはよ、どうしたの。今日は早いね」
くしゃ。
聞き慣れた声とこの教室では唯一の呼び方に、直姫は咄嗟に掌の中で手紙を丸めた。
真琴には見せないほうがいい。
入学してはじめての行事、それが全校生徒の見る大舞台なんて、クラスメイトたちもみな緊張しているのだ。
それでなくても、真琴はただでさえ少し心配しすぎるきらいがある。
わざわざ不吉な種を蒔いて不安にさせることもない。
直姫は掌を開かないまま、相変わらず眠そうに、言った。
「はよ、真琴」