ONLOOKER Ⅱ
予想外の予定外
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そしてついに、幕は上がる。
一年B組の親睦会が、異例の定期発表会での演劇だという話は、すでに学校中に知れ渡っていた。
貧乏人の少女と富豪の一人息子という、身分違いの二人の禁断のラブロマンスに、観客の盛り上がりは予想以上だ。
しかも主役を演じているのが、常に注目度の高い“あの”生徒会、新入りの美少年二人。
おまけに片方は女装、もう片方は人気実力ともに今ナンバーワンの俳優、佐野真琴。
話題性は十分すぎるほどだ。
これを楽しみにしていた観客も、ずいぶんいたのだろう。
華やかなパーティーのシーン、主役の二人が出会う場面などでは、まるでアイドルのコンサートのような歓声さえ起こっていた。
劇も中盤を終える頃には、会場の熱気や空気に酔って体調を崩す生徒まで出ていたくらいだ。
そしてそんな中、事件は起こった。
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「捻挫!?」
ステージ裏の小部屋に重なって響くのは、麗華と真琴の声だ。
そんな二人の正面、椅子に腰掛けた直姫を、クラスメイトたちが不安げに見ている。
彼女の手には氷嚢が握られ、左足首に当てられていた。
「さっき、袖でなにかに躓いちゃって……」
衣装が動き辛いことや、急いで移動していたこと、ステージ裏の独特の暗さなども相まって、体勢を立て直しきれなくて、足を捻ってしまったのだ。
そこは本来なら機材を置いたりしてはいけない、通り道になる場所である。
練習と打ち合わせを何度も重ねてきた一年B組の生徒が、それをわかっていないはずはない。