ONLOOKER Ⅱ
「わかりましたわ、西林寺くんのお元気がない理由が!」
そんなことはつゆ知らず、少女たちは教室の片隅で、顔を寄せ合った。
一人の女子生徒が、ぴっと指を一本立てる。
なんですの、と囁く声に、彼女は自信ありげに小声で言った。
「今日は佐野くんがお仕事で遅刻しますでしょう? だから淋しがっていらっしゃるのよ!」
「まあ! それならわたくしたちが喜んでお話相手になりますのに……!」
「佐野くんじゃなきゃだめなのよ、きっと!」
「淋しがり屋さんですのね……!」
きゃいきゃいと高い声は、教室の反対側にいる直姫にさえ届くほど大きな声になっている。
近頃よくそんな妄想が、直姫や真琴の周囲にいる女子生徒たちによって振り撒かれているのだ。
真琴が生徒会室で相談してみたら、「あぁ、ついに真琴たちもターゲットになったんだ」と聖が乾いた笑いを漏らした。
多少見た目の小綺麗な生徒ならば遅かれ早かれ誰もがそういった話題の的になるから、諦めて関わらないが吉、ということらしい。
変に否定するとなぜかさらに面倒な噂が立つから、放っておくのが最善策なのだそうだ。
(暇なんだな……他に考えることないのかな)
彼女らいわく“儚げでアンニュイな横顔”で内心毒づく直姫の横に、誰かが立った。
姿勢のいい立ち姿は、生まれも育ちも生粋のお嬢様、といった感じである。
それは、一年B組学級委員長、大友麗華(おおともれいか)嬢だった。