ONLOOKER Ⅱ
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「佐野くん西林寺くんっ、大丈夫ですか!?」
「怪我はない!?」
舞台から降りた二人に、心配顔のクラスメイトたちが次々と集まってきた。
その中の一人は、深く肩を落としている。
「きっとライトを固定するネジが緩んでたんだ。僕がちゃんとチェックしておけば……」
「え、委員長のせいじゃないよ」
「そうだよ、委員長が叫んでくれなかったら危ないところだったんだよ。むしろ感謝してるくらいだよ」
「そうですわ!」
高らかな声を上げて琢己の肩に手を置いたのはやはり、我らが舞台監督兼脚本家、親睦会実行委員、そしてもう一人の学級委員長である、大友麗華嬢だ。
委員長を慰め励ますためかと誰もが思いきや、彼女は満面の笑顔で言い放った。
「終わりよければすべてよし、結果オーライですわ! 誰にも怪我はなかったのですし、まさに素敵ハプニングといえましてよ?」
「お、大友さん……?」
「佐野くんさすがです、素晴らしかったですわ、ラストシーンのアドリブ! 自然に笑い合うあの表情、私の脚本なんて遥かに凌駕していましたわ!」
麗華は直姫と真琴の手を取って上下に振りながら、嬉々と捲し立てる。
どうしてか、おしとやかなお嬢様口調がその勢いを助長しているように感じられた。