ONLOOKER Ⅱ
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計画は大成功だ。
せっかく皆で準備してきた劇が台無しになるのは気が引けたが、それも彼のキスシーンを防ぐためと思えば、あまり気にならない。
主役二人のアドリブのおかげで無事に幕が降りた時、とても安心したし、惚れ直しもした。
照明器具を落とす時も、彼が怪我をしないようにしっかり場所を考えたから、きっと平気だったはずだ。
ひとつだけ、心残りはあるけれど。
本当はキスシーンを阻止するために、あの人には舞台に上がること自体やめてもらおうと思っていたのだ。
でも脅迫状は無視されたし、誰にもなにも言わずにいたみたいだから、仕方なく強行手段に出ることになってしまった。
男子生徒がヒロインを努めることに異議を唱えるとか、こんなこと生徒会の威信に関わるとか、なんとでも理由をつけて最初から役を降りてくれていれば、こんなことにはならなかったのに。
それだけが残念だ。
舞台での彼は、確かに素敵だった。
だけど本当は、彼があんなラブストーリーを演じることが、嫌で嫌で仕方がなかったのだ。
結局のところキスシーンは決行されなかったのだし、それでも劇はなんとか成功したし、大友さんの言っていた通り、結果オーライ、ということにしておこう。
その人は、わずかな安堵と良心の呵責と、そしてなにより、大きな達成感を抱きながら、多目的室の扉を開けた。
証拠を隠滅しようと、制服の上着のポケットに忍ばせていたスパナを取り出す。
そしてそれを、似たような工具が何本も入った工具箱に入れようとした、その時だった。
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「やっぱり……君だったんだね、」
「っ!?」