ONLOOKER Ⅱ

***

「おはよう」
「佐野くん、おはようございます」
「ね、今日、楽しみですわね!」
「へ?」


相変わらず賑やかな、一年B組の教室。
とりわけ浮き足だった少女たちが、登校したばかりの真琴に話しかける。

なにかあったのかと、真琴は近くにいた生徒に声をかけた。
振り向いたのは委員長こと、山田だ。
律儀におはよう、と言い合ってから、本題を尋ねる。


「なんか皆そわそわしてるけど、どうしたの?」
「あぁ、聞いてない? 留学生が来るんだよ」
「留学生……こんな時期に?」
「なんでも、イギリスからの超短期留学らしいよ。だから、半月くらいこのクラスにいるだけだとか」
「へー……ずいぶん短いんだね」


それから一つ、二つ言葉を交わし、自分の席へ向かった。

席は、窓際の一番前から出席番号順に並んでいる。
窓際最後尾である真琴の前、つまり出席番号でいう“さの”の前の人物は、机に伏せって眠っていた。


「直姫、おはよ。」
「……ああ、真琴。はよ」
「もう、起きなよ。転校生が来るんだって」
「無理……三時半まで映画観てたんだよ……」
「自業自得じゃない。早く寝ればいいのに」


呆れたように言うが、直姫からの反応は返ってこなかった。

よくそんな体勢で眠れるものだと思いながら、一応とばかりに、「授業中は居眠りしちゃだめだよ」と声をかける。
それから、仕方がないな、と溜め息を吐いた。

その時だった。

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