ONLOOKER Ⅱ


居吹に呼ばれた麗華ともう一人の学級委員が、黒板の前に立って同級生たちを見渡す。


「まずは親睦会でなにをしたいかをお聞きしますわ。ご意見があればどんどんおっしゃってくださいな!」
「お、おねがいします」


笑顔ではきはきと話す麗華に対して、もう一人の学級委員は、ぼそぼそと言って小さく頭を下げるだけだ。
地味で内気で気弱そうな、どう見ても立候補で学級委員になったようなタイプではない男子生徒である。

名前は山田琢己(やまだたくみ)というが、皆が揃って「委員長」と呼ぶので、あまり本名は浸透していない。



さて、あとになって考えてみれば、直姫にとってすべての発端はこの四時間目の学級会にあったといっても、少しも過言ではない。

大体が、本来ならば生徒を監督し指揮する立場にあるはずの教師が、放任し教室の隅で文庫本を開いていたと言うのが、まずおかしいのだ。
非常識極まりないと、普通ならば誰かが意見しても良さそうなものだ。

だがこの時に限っては、親睦会という興味を引く行事の話し合いでクラス中がどこか浮き足立っていたこと、その教師というのが竹河居吹であること、そして、この学校がそもそも常識的ではない“超セレブ高校”であることなどが、大いに関係していた。

しかし、こればかりはさすがにセレブのおおらかさとかで解決できる問題じゃないだろうと、自分自身も名家のご息女である直姫は、後にぼやいたという。

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