ONLOOKER Ⅱ
「私はお茶会がいいと思いますわ。皆さまでお茶やケーキを持ち寄ってはどう?」
「まあ、素敵ね! 私の家のアップルパイ、すごく美味しいのよ」
「でもそれじゃあお昼休みのお茶会を大きくしただけじゃないかしら? 音楽会はどう?」
「それなら、オーケストラを招いたらいいんじゃないかな」
「たまには趣向を変えて、雅楽鑑賞なんてしてみたいよ」
「あ、いい考え!」
この一年B組は、外部入学や芸能系のいわゆる“庶民派”な生徒よりも、幼少から悠綺に通う、家柄の良い生徒が圧倒的多数を占めるクラス編成になっている。
そのためか、交わされる会話はやけに丁寧な言葉遣いばかりで、中身もどこか浮世離れしていた。
マイペースに育ってきた生徒も多く、皆好き勝手に発言するため、なかなか意見はまとまらない。
委員長こと山田琢己がなんとか黒板に書き留めてはいるが、埋め尽くしそうなほど書かれた白い文字のほとんどは、あまり現実的とはいえないだろう。
そんな中、一人の男子生徒が言った。
「演劇なんてやってみたいな。春の定期発表会が近いし、そこで発表させてもらうっていうのは?」
教室に、一瞬だけ静寂が訪れる。
しかし次の瞬間にはすぐに、沸き立つように声が飛び交った。
「いいわね、それならクラスの全員が参加できますわ」
「楽しそう!」
「なにしろ、うちのクラスには佐野くんがいることだし」
「え、ぼ、僕?」
不意に話題の中心に自分の名前が上がって、真琴は目を丸くした。
これはどうやら不穏な流れだと悟って、あの困り笑顔で弁解を試みる。