ONLOOKER Ⅱ

***

四時間目終了の鐘が鳴った途端に、教室は騒がしくなる。
昼休み、持参したランチボックスを取り出す者や、各校舎にある購買へ向かう者、北校舎一階の食堂へと出向く者。

三者三様の中、直姫は自前の弁当を広げる一人だった。

二週に一度くらいは購買でパンやおにぎりを買ったりするが、食堂へはほとんど行ったことがない。
真琴に付き合って、これまでに三回行っただけだ。

今日もいつものように、教室の自分の席で昼食をとろうとしていた。
の、だが。

姿勢の良い立ち姿、背後に立ちはだかる人物の存在に気付く。

いつもの通りならそこには、愛らしく微笑んだ大友麗華嬢が、朗らかな美声で「直姫くん!」と呼び掛けるところだ。
けれど、振り返った直姫は、麗華よりもずいぶん高い位置にある顔を見上げることになった。


「食堂へ行きましょう? 案内をおねがい」
「あ、さとき」
「りっ! 里吉ちゃん、」


昨日の放課後、秘密を共有しあう仲、しかも実は幼馴染みだと発覚した直姫である。

里吉の眉がひくりと動いたのを見て、慌てて真琴がフォローしたが、つい本名で呼びそうになったことに、全く悪気がないとは言えなかった。
なにしろ昨日一日だけでも、直姫や真琴だってずいぶん彼(彼女、というにはやはり、抵抗があった。本人がオカマではないと言い切ったからだろうか)に振り回されたのだ。

しかし、そんな自分たちになぜ里吉が声をかけたのかがわからなくて、直姫は見上げたまま、首を傾げた。

< 72 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop