ONLOOKER Ⅱ
「え、でも自分はお弁当だし」
「そう。でも私は食堂でいただきますの」
直姫は訝しげに、さらに首を捻った。
視線を降ろして、真琴のほうを向いて、また里吉を見上げる。
さっぱり理解していない直姫の表情に、里吉は笑顔のまま、少し低くなった声で言った。
「私が日本にいる間は生徒会の皆様がサポートしてくださる、というお話だったのではなくて? 同じクラスなんだから、放課後までは貴方たちがその役目なのですよね」
にこり笑顔で、だが目に力を込めて言った里吉に、直姫の機嫌も傾いていく。
「夏生先輩に会いにわざわざ来たんでしょ? なら先輩にくっついてればいいじゃん」
「そうしたいのはやまやまです。けれど、授業中や休み時間までずっといられるわけはないでしょう。常識的に考えれば当たり前のことですわ」
「非常識の塊がなに言ってんの」
「だいたい、その夏生様が、日中はあなたたちを頼っていいからと言ってくれたんです。理事長命令なのでしょう?」
理事長命令。
その言葉を出されては、断りたくても断るわけにはいかない。
里吉が切り札を持ち出してさっさと教室を出て行ってしまったので、直姫と真琴は渋々ながらも、後に従うしかないのだった。
「元はといえば夏生先輩がお坊っちゃまなんかに惚れられるからこんなことになったってのに」
「な、直姫……別に夏生先輩が悪いわけじゃないんだから」
「面倒なことすぐ後輩に押し付けんだから、あの人」
「なにか言いました、直姫さん?」
小声でぶつくさ言う直姫に、里吉がくるりと振り返って笑いかけてくる。
「別にいー」
笑顔なのに笑っていない女装少年と、唇を尖らせて瞳を眇める不機嫌な男装少女。
そんな奇妙な二人に挟まれた真琴は、実に居心地悪そうに眉尻を下げるのだった。