ONLOOKER Ⅱ

***

「ほんと、なんなんですかね、あの人……」


無愛想な友人とわがまま留学生の間を、健気にも取り成していた真琴だったのだが。
溜め息と共にそんなぼやきを吐き出したのは、彼にしては、非常に珍しいことだった。

聖が、手を動かしながら彼をちらりと見やる。


「あの人って、サトキチくん?」
「サトキチくんって呼ぶと鬼のごとくブチギレるゆえ、サトちゃんって呼ぶのがベストだと思うんだけろ。紅ちゃんどう思うにょろ?」
「あぁ……いいんじゃないか」
「紅先輩だいじょーぶスか? なんか疲れに効きそうなハーブティーでも淹れてもらいますか」
「あぁ……いいんじゃないか」
「だめだ、さっきからそれしか言ってないし……ちょっと仮眠取ってきたらどうですか?」
「あぁ……いいんじゃないか」
「なんなら俺が添い寝してあげよっかー?」
「叩き斬る」
「あは、手厳しーな」


いつものように全くもって中身のない会話をしてはいるが、場所はいつもの生徒会室ではない。
石蕗邸の離れ、紅の自室である。

里吉の我が儘と恋宵のテンションをいなし続け疲れきった紅を励ますため、と、一応生徒会活動の一貫だ。

本来ならば必ず生徒会室で行う決まりなのだが、さすがにそう何度も、部外者である里吉を、関係者以外立ち入り禁止の部屋に入れられなかったのだろう。
留学生だからといって特別扱いしては、他の生徒の反感を買うことになる。

居吹から、現在手をつけている作業は持ち帰って、家でやってくるようにとの通達があったのだ。
つまりは事実上の、一時活動休止状態なわけだ。

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