ONLOOKER Ⅱ
「ところで、真琴はなにをそんなに怒ってるんだ?」
少し静まっていた怒りが、紅に聞かれて蘇ったのか、真琴は眉を寄せた。
彼にしてはかなり貴重な、不満をあらわにした表情だ。
「聞いてくださいよ! もうほんっとあの人に一日中振り回されて」
「あぁ……すまんな、大変だったろう……」
生気の欠けた目で自嘲的な笑みを浮かべながら、心の底から紅が言う。
准乃介がすかさず、紅が謝る必要ないでしょ、と言った。
唇を尖らせた真琴の話によると、里吉の言動はこうだ。
日中は同じクラスの直姫と真琴が世話係だと言い放った彼はまず、昼食は毎日食堂がいいとか、自分は慣れないのだから二人も一緒に来るようにと注文をつけた。
食堂へ行けば、今日のメニューはイタリアンと中華だったにもかかわらず、フレンチじゃなければ食べたくないだとか言って、真琴たちだけでなくスタッフたちまでもを困らせた。
そうかと思えば、中庭を一周してみたい、次は屋上全部に行って中庭を見下ろしてみたい、放課後には部活中の茶道部にお邪魔して茶を立てるところを見たいなどと、わがままばかり言っては二人を引っ張り回していたのだ。