ONLOOKER Ⅱ
「もうくたくたです……」
「いちいちそんなに真面目に取り合わなきゃいいのに。まあ、歩きっぱなしで疲れたのは確かだけど」
「直姫もひどいんです。最初はあんなに不機嫌そうだったのに、僕が怒ったからって言って急に無反応になっちゃうんですよ」
「だって、真琴が代わりに怒ってくれるから」
なにそれよくわかんない、と真琴が大きな溜め息を吐く。
真琴が愚痴るままに聞いていた夏生が、ぼそりと口を開く。
「無視すればいいんじゃない」
「な、なっちゃん揺るぎねえな……」
「理事長命令じゃにゃい」
「そんなことできませんよぉ……」
「つーか、そのわがまま坊っちゃんはどこ行ったわけー?」
「あ、そういえば……」
准乃介に言われてようやく気付く彼らも彼らである。
紅の自室であるこの離れには、寝室として使っている洋室のほかに、和室が二部屋ある。
そのうちの大きいほう、現在彼らが集まっている部屋を、里吉と恋宵に客間として提供しているらしい。