ONLOOKER Ⅱ

***

里吉がひたすらに奔放だったり直姫が人の話を聞いていないことを露呈したり、その後また全員でやった人生ゲームが実に混沌に満ちていたりした、結果。

翌日の紅は、より疲労困憊していた。

何日も厄介になっては悪いから自宅に帰ると言った恋宵の肩を掴んで、紅がなんとも悲しげな目を向けたので、またもう数泊することになったらしい。
どうやら、一人では里吉の相手をしきれないから、ということのようだった。

だが、着替えを取りに家に帰った恋宵は、なにを思ったかアコースティックギターとキーボードを抱えて石蕗邸に戻ってきた。
そして里吉の前で突然弾き語りゲリラライブなんて始めたものだから、昨晩の石蕗家の離れはちょっと、宴会でもやってるんですか、というような騒ぎだったそうだ。

恋宵を引き留めたことが果たして紅にとって正解だったのか、彼女の様子を見ると、なんとも言えない。

そんな紅の気分転換のためか、黒塗りメルセデスでの送迎はなしになった、その日の朝。
里吉は、いつにも増して不機嫌だった。


「なんですの、これは」


眉を吊り上げて苛々と言う里吉に、准乃介がゆるく笑う。

バス通学の彼もいつもならば悠綺高校前まで乗るのだが、石蕗邸より前のバス停で降りて、ちょうど彼女らが家を出る時刻に合わせて歩いてきたのだ。
護衛の役目を果たすならば、一人でも人数が多いほうがいい、というつもりだったが、合流した時点で、それは杞憂だったと知った。

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