ONLOOKER Ⅱ
「あんな車で送迎なんて、いかにもVIPって感じで嫌だって、君も言ってたでしょー」
「言いましたわ、言いましたけど! それとこれとがどう違うっていうんです……!?」
「運転手のぶん、三人少ない……かな?」
「わたくしがそんなことを言っているとでも?」
怒りに声を震わせる里吉に、准乃介も苦笑いを返すしかない。
周囲を見たって、別に緑豊かな景色を眺めながら歩けるわけではない。
なにしろ、里吉よりも頭一つ分はゆうに長身な准乃介よりも、さらに縦にも横にも大柄なスーツの男たちが、ぞろぞろと六人も彼らの周りを取り囲んでいるのだ。
大袈裟で物々しい、というよりも、なんというか。
「なんなんですのこれは! こんな……バカみたいなっ」
「バカは言い過ぎにょろよう」
「まあ、だいぶ異様……ちょっと近づきたくなかったもん俺ー。他人のふりができたらどんなにいいかと」
あはは、と笑う准乃介の毒も、やたらと鋭い目付きで辺りに気を配る彼らには、ちっとも効いていない。
恋宵までもをげんなりとさせる強者たちなのだ、その真顔が崩れるなんて、もともと期待していなかったが。
紅なんかはもう諦めの境地に至っているようで、なにも言わずに颯爽と先頭を歩いている。
その後ろで、里吉だけはいまだにぶつぶつと不満を漏らしていた。