ONLOOKER Ⅱ
「だいたい、わたくしはボディガードなんて頼んでませんのに……ちゃんと信用できる人たちなんでしょうね!?」
「理事長がつけてくれたんだって。なーんか怪しげだけど、大丈夫なはずだよ?」
「だからって……今時コメディ映画でも見ませんわ、こんなの」
確かに大袈裟すぎるとは思うし、胡散臭さも笑うしかないレベルだ。
だが、マフィアと繋がりのあるライバル会社に狙われていると言っていたのは、里吉本人である。
そこまで怒ることないんじゃ、と、准乃介は一人首を傾げた。
そんな、ただでさえ目を引く四人に加えごつい大男が六人も、という、やけに悪目立ちする集団が、悠綺高校の門を潜った。
それとほとんど時を同じくして、よく見知った車が、静かにロータリーに滑り込む。
余計な音も振動も立てずに停車するとすぐに、初老の運転手が降りて、後部座席のドアを開け、恭しく頭を下げた。
よく磨かれた革靴が、地面に足を下ろす。
気付けば周囲の生徒たちが、決して近付きはせず、だがその車をじっと見つめていた。
まるで大物芸能人や政治家のような登場の仕方をしたその人物は、一分の隙もない優雅な所作で、車を降りる。
その瞬間、待ちわびたように黄色い歓声が飛んだ。
「東雲さま! おはようございます!」
「ごきげんよう東雲さま!」
よく聞けばそう言っているのが確かにわかるが、ほとんど悲鳴のようなそれは、よくアイドルのコンサートなんかで飛び交う類いのものである。
その中心で爽やかに美しい微笑みを浮かべて、東雲夏生は口を開いた。