ONLOOKER Ⅱ
どうしてここに、と呟いた真琴に、准乃介は苦笑を見せた。
南校舎のアーチのところで東校舎へ向かう二年と別れた後、そのまま北校舎へ直進せず、東校舎へ入る里吉の後ろについて来たらしい。
正確に言えば、引き摺って連れて来られた、というほうが正しいのだが。
隣には、呆れたように溜め息を吐く紅もいる。
他の学年が一階を通りすぎたり、特定の部屋に用事があって出入りすることはあっても、二階より上にある教室まで来ることというのは、ほとんどない。
そのうえそれが、全校生徒の憧れの対象である三年生の二人なんて、生徒たちにしてみればちょっとした事件だ。
にわかに辺りがどよめいていたのだが、直姫も真琴も、全く気づいていなかった。
どこか眩しがるようにも感じられるクラスメイトたちの視線の先、つまり自分の目の前にいる先輩二人を一瞥して、直姫は溜め息を吐いた。
そして、会話を再開させる。
「……で、夏生先輩のせいって?」
「名前で呼んでくれとあいつに言ったら、それはもういい笑顔で、『サトちゃん』と……」
「え、それは……面白いな。ムービー撮ってないんですか」
「撮るわけないだろう。なんだその夏生みたいな思考は」