ONLOOKER Ⅱ


「私、観光をしてみたいんですの。どこでもいいわ、連れて行ってくださいな」
「は……なに言ってんの、マフィアに狙われてるとか言ってるくせにそんな」
「いいんですの? あなたの秘密、バラしますわよ?」


ぐっと耳元に寄って小声で囁く声に、直姫はほんのわずか、目を見開いた。
ぱっと離れた横顔を睨み付ける。


「きったな、」
「取り引きに汚ないもなにもございませんわ」


ふふんと勝ち誇った笑みを浮かべる里吉を、直姫は憮然として見やった。

しかし、ふとあることを思い付いて、隣りにいる真琴に目で合図を送る。
それを受けた真琴もくるりと背中を向け、里吉には聞こえないように、コソコソと話しはじめた。

そうして再び振り返った彼らの、特に直姫の妙な微笑みに、里吉は怪訝な表情を浮かべた。


「……なんですの? 二人して」
「サトちゃんさ、夏生先輩とデートしたくない?」
「え? それは……も、もちろんですわ」
「でも怖いボディガードの人たちがぞろぞろ付いてきちゃ、邪魔でしょうがないよね」
「ええ、まあ……」
「かといって二人だけで外出なんて危ないこと、させてくれるわけないし」
「そ、そうですわね……?」
「それで考えたんだけど」


にやりと目を細めて笑った直姫と真琴は、面白い悪戯でも思い付いた、子供のような顔をしていた。

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