俺様婚約者~お見合いからの始まり~
「あ、それと、ストーカー疑惑のかからないうちに一応言っておくけど、俺がここにいるのは窓から男と歩く百合子が見えたからだから。

後をつけたりしてたんじゃないからな。

ほんと、久々に全力で走ったよ。

手のかかるお嬢様だな」

ムカッ。

…だけど…、ん?窓…?

「窓からって…どこの…?」

「あそこ」

彼は親指で斜め後方のビルを差し示した。

あれって…。

そのビルの屋上近くにライトアップされた文字は『SAWANOI』…。

………。

澤乃井建設の本社近くだったのね…。

「十九階にいたからさ、エレベーターが長く感じられて焦ったよ」

そう言えば、髪が乱れてさらさらと揺れていたわね。

彼が私を思って慌てて駆けている様子を思い浮かべて何だか嬉しくなる。

「ふふふっ…」

思わず笑みが零れた。




< 103 / 314 >

この作品をシェア

pagetop