俺様婚約者~お見合いからの始まり~
「ちょっと、どういう事?いきなり何なの?」

悠斗は涼しい顔でちら、と私を見ると煙草の煙を上に向かってフーッと吐き出した。

「何って…。百合子がこうしたいって言ったんだろ」

「えっ?意味分かんないっ」

「さっき言ったじゃないか。帰りたくないって。
俺と一緒にいたいって」

「そ…そんな…」

「今さら冗談だった、とか言うなよ。誘ったのは百合子の方なんだから」

えええっ!何で…、何でこんな展開にっ!!

悠斗は上目遣いで私を見ながらクスクス笑っている。

ど、どうしよっ…。

確かに、さっき、そんな様な事を口走ったけれど、こうも素直に行動に出られると面食らってしまう。

そこへ支配人が足早に近付いてきた。

「お待たせ致しました、こちら、ロイヤルスイートのキーでございます。ごゆっくりおくつろぎ下さいませ」

「ああ、ありがとう。

後でいつもの軽い食事を二人分持ってきて」

「かしこまりました」

悠斗は煙草を軽く揉み消しながら立ち上がった。

あの…『いつもの』でメニューが通じるんですか…。…どんだけ来てるのよ?…誰と…?

またしても嫉妬の渦が胸に広がる。

「ほら、行くぞ」

私に一言いうとスタスタとエレベーターに向かって歩き出す。

くそ~。何なのよ、あの余裕は。

ここでビビっちゃいけないわ。

よし、私も大人の顔で行くわよ。

私もスッと立ち上がると支配人さんに軽く頭を下げ、悠斗に追い付こうと小走りでエレベーターに向かった。





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