俺様婚約者~お見合いからの始まり~
あの装いだという事は、俺に会うためにここに連れて来られたのだろう。

だが、彼女は俺を見ても何の反応もしなかった。

現に、たった今もふと辺りを見回すと頬を微かに染め上げた女性達、数名と確実に目が合うというのに。

…自惚れが強い事は自覚している。

だが、俺がその気になれば誘いに乗らない女なんているはずがない。

よし、試してみるか…。

隅のテーブルに先ほどの皿を並べ、座って一人、黙々と料理を食べ始めた彼女に静かに近付いていく。

真横に立った俺をふと彼女が見上げた。

「…おいしいですか?」

女が一番喜ぶ微笑みを向けて俺が尋ねると、彼女は手と口を止める事なく不思議そうに俺を見た。

「…ご一緒します…?」

皿を少しだけ俺の方にずらして勧めてくる。




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