俺様婚約者~お見合いからの始まり~
「…ねえ、悠斗さん。
この後、部屋を取らない…?」

菜緒子が甘えた声で誘いをかけてくる。

父に言われるがまま、彼女とホテルのレストランで食事をして窓の外の夜景をぼんやりと眺めていた時だった。

彼女の方を見ると、ゆっくりと瞬きをして艶やかな視線を投げ掛けてくる。

…露出の多い派手な服。

長い爪には紫色のマニキュアがペットリと塗られている。

…はあ…。

面倒臭い…。

帰って眠りたい。

俺は彼女から目を逸らし、半ば投げやりに答えた。

「…ああ。いいよ」

すると彼女の顔がパアッと明るくなる。

…容易い女。つまらない。

「私ね…、あなたの事、本気になってもいいのよね」

「…ああ。いいんじゃない」

どうでもいい。

「ねえ、悠斗さんはバイオリンが堪能なんですってね。

今度、聞かせていただけないかしら。私はピアノが得意なのよ。

あ、私と演奏してお父様達に聞かせたら素敵ね」

…勝手な事を言ってるな。



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