俺様婚約者~お見合いからの始まり~
「そうだね」

菜緒子の言葉のひとつひとつが耳を掠めてはスッと抜けていく。

……うるさい…。

俺はガタリと立ち上がると菜緒子の手をグッと掴んだ。

「早く、部屋に行こう」

菜緒子は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにニコリと笑い、「ええ」と言った。

彼女の手を引っ張り、引きずる様に部屋に押し込む。

「ゆ、悠斗さん…、そんなに慌てないで」

部屋に入るなりシャワーも浴びずに彼女をベッドの上に放り投げた。

そのまま流れ込むように俺も彼女の上に股がる。

上から彼女を見下ろすと、期待を込めた目で俺を見上げている。

そのまま顔を近付けていき、唇を重ねようとした。

あと数センチで唇が重なる…。

…その時、フッと脳裏に百合子の顔が浮かぶ。

……え…。


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