俺様婚約者~お見合いからの始まり~
「副社長、二時からは高野建機の野坂専務と打ち合わせですので、準備をお願いします。

四十五分にお車を下に回します。」

「ああ、分かった。」

軽く頭を下げて秘書が部屋から出ていくと、俺はドサリと椅子に座り、煙草に火を点けた。

煙をフッと吐き出しながら明日の事を考える。

…とうとう、この時がやって来た。

四日前に鹿島ホームが突然の経営危機に陥った。

重要取引先の倒産の煽りをまともに受けたのだ。

それを知るや否や資金援助を申し入れる。…もちろん、条件付きで。

だが、さすがはあれほどの器量の娘だ。俺と同じ事を考えている奴が数名いた。

みな、百合子との結婚を条件に鹿島ホームを立て直すと申し出ているようだ。

…冗談じゃない。

俺は十四才の時から彼女が大人になるのを待ってきた。

今さら他の男に拐われてなるものか。


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