俺様婚約者~お見合いからの始まり~
悠斗はフワリと笑ってからフッと窓の外を見た。

それから眩しそうに目を細めて空を見上げる。

私は、いつもの険しい印象を薄めた穏やかな顔の彼を初めて見た気がしていた。

「…ね、悠斗…。
もう一度、聞かせてくれる…?」

彼はゆっくりと私の方を向いて微かに笑うと、ふわりと楽器を顎に挟み込み、弓を引き下げた。

「………。」

彼の奏でる柔らかな音が心に響いてくる。

私はそっと目を閉じて悠斗と出会った日からの記憶を辿っていった。

私を突き放している様で実は一番側にいた事、全てを手にしている様で実は一番満ち足りていない事、……今なら少しは解る、これからはもっと…。


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