俺様婚約者~お見合いからの始まり~
「べっ、別に不満だなんて思ってないわ」

「はい、はい。ほら、足元、気を付けて」

勇んで車から降りると、履き慣れないパンプスの踵がぐらついてバランスを崩す。

「…きゃっ…!」

「おっと…、危ない」

すかさず悠斗の腕が抱き抱える様にして私の身体を受け止めた。

「……!」

細い割には逞しい腕にまたしてもドキリとする。

…あれ?…離れない…。

そのまま抱き締められる。

うわ…。どうしよう…。

そう思いながらも彼のぬくもりが心地よくて…。

いつしか私も彼の背中にそっと手を回した…、その時…。

「あらあら、まあ!いやだわ、お邪魔だったかしら!!」

甲高い声に驚き二人は、パッと身体を離した。

…お母さん…。

見ると玄関先に嬉しくて仕様がない様な笑顔の母が立っている。

「まあ、私ったらぁ!ごめんなさいねっ。

澤乃井さん、わざわざ送っていただいてどうもすみません。

色々、決まりましたかしら?」

「鹿島常務。こんばんは。百合子さんに遅くまでお付き合いいただいて申し訳ありません。

一応、ドレスは百合子さんに似合うものを決めさせていただきました。」

悠斗は母のテンションに引くこともなく、にこやかに挨拶をする。

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