逢わむとぞ思ふ~籠の鳥~


半刻が過ぎた。


部屋に戻り、書を読んでいる頃。


「…失礼致します。美鶴で御座います」


「入りなさい」


「御館様が、姫様をお呼びになられております」


「父上が…」


「はい」


「…すぐ参ります」


私は紅の着物に着替え、すぐに父上の元へと向かう。


「…おお、宮琴よ。久しいな」


「父上様。お久しゅう御座います」


私はどれだけぶりかの父上に頭を下げる。


「まあまあ、堅苦しいのは良い。…さあ、本題へ入るぞ」


「…はい」


だいたい、話の検討はついていた。


「宮琴。そなたを側室に迎えたいという者がおる」


「側室…で御座いますか?」


「ああ。名を馳せておる者じゃ」


「…」


正室ではなく側室。


私にとってはとても失礼な話だ。


…しかし。


「…有り難きお話。お受け致します」


籠から出られるのなら、手段は選ばぬ――。




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