それはたった一瞬の、
4.消えない虹
釧奈だけでなくみんなが交互に出入りしてきて、熱が下がるまでの生活はとても賑やかなものだった。
家にいる時とは比べ物にならないほど…。
『ケホン、ケホッ』
静かな室内に響く、咳の音。
苦しい時もしんどい時も、いつも独りぼっちだった。
母さんがいてくれたら何か変わっただろうか。
父さんがいない家でそんなことを思うたび、情けなさに胸が震えた。
なんて弱いんだろうと自己嫌悪に陥るしかなかった。
それに比べたらこの状況はうれしいものだ。