それはたった一瞬の、


部屋に戻った瞬間、溜めこんでいた息が一気に飛び出してくる。

「はあー…」

そのままドアにもたれかかるようにずるずると座り込み、窓の外を見てまたため息。


ため息をつくと幸せが逃げる、そんな迷信を考えたのは誰だろう。

それが当たっているとしたら私は、今までいくつの幸せを手放してきたのだろう。


窓の外は夜になっても変わることのない灰色の世界。

月なんてロマンチックなものが見えるはずもない。


重い体を無理に立ち上がらせて窓を開けると、心地よいそよ風が吹きこんできた。


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