それはたった一瞬の、
さっきの私がいた位置に背をもたせかけて立ち、足を組むその姿はちょっとかっこいいかもしれないけれど。
「何か用?」
警戒しながら言うと、彼は自身の顎に人差し指を添えて小さく微笑んだ。
「長い夜のお供に、話し相手は要らないかい」
眠れないんだろうと言われ、返事に詰まる。
その通りだ、眠れる気なんてこれっぽっちもしなかった。
月が出ていれば慰めになったかもしれないのに、それすら無い夜となればどうしていいのかわからない。
悔しいけれど柊の言うとおりにするしかない。
「…要る」
ぼそっと呟けば、彼はうれしそうに笑った。