それはたった一瞬の、


やり場のない深いため息が肺に吸い込まれていく。

どこにこの息を吐き出せるものか、全部自分で飲み込むしかしょうがない。


「そんなつもりで言ったんじゃないんだよ…」

「えぇ、わかっています」

「敬語が上手だったり、物腰が優雅だったり、私よりずっと多くのことに目を向けられたり…、そういうのが羨ましかっただけなんだよ」

「ありがとうございます…」


深々と頭を下げてほしかったんじゃない。

でもどうやって言えばいいのかわからない。


子どもだ、私は。
どうしようもなく。


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